君の瞳に

「乾杯!」
 暖かな色の照明を反射し、キラリと光る杯の縁。ガラス同士がぶつかり合う澄んだ音が響き、人々は顔を寄せ合って笑う。その空間にはどこまでも穏やかな時間が流れていた。
 そしてグラスを満たした琥珀色の液体は、褐色の喉へと滑り落ちていく。
「おい、どこを見ている。リンク!」
 ランプの中の幻想は、鋭い声によって打ち破られた。
 リンクは慌てて顔を上げた。
「あ。すみません。ぼーっとしてました」
 正直に答えすぎた。相手は余計に怒ったようだ。
「この、何をヌケヌケと……」
「構わん。夜を徹してナボリスを鎮めていたのだろう。疲れて当然よ」
 手を軽く振ったのは幼きゲルドの族長ルージュだった。ゲルドの街の最奥、族長の屋敷にある謁見の間には、ぽつりぽつりと小さな照明が灯る。それを眺めていてあんな夢想をしたのだ、とリンクは気づく。
「次に呆けたら許さないからな」
 族長側近のビューラは怒りで眉をつり上げている。恐縮するリンクの目線を引くように、ルージュが玉座から身を乗り出した。
「リンク。疲れているところ悪いが、今晩宴を開こうと思う。ナボリスが落ち着き、雷鳴の兜が戻ってきた祝いだ。主賓はもちろんお前だ」
「本当ですか!」
 疲れが一瞬で吹き飛んだ。神獣に乗り込むという目的を達成するためとはいえ、ゲルドの街のために頑張ってきた甲斐があるというものだ。
「街の総力を挙げて、最高のもてなしをしよう。何か、食べたいものはあるか」
 するとリンクは瞳を輝かせ、
「あのお酒が飲みたいです。ヴァーイミーツヴォーイ!」
 ルージュは目を丸くし、次いでくすりと笑った。隣のビューラが鼻から荒い息を吐く。
「ふん、お前のような子供が酒を? 無理に決まっているだろう」
「え、ダメなんですか」
 まだ少女と呼べる年頃のルージュが肩をすくめる。
「あれは大人のヴァーイの飲み物だ。私はもちろん、お前にもまだ早い」
「イーガ団のボスを倒して神獣を鎮めても、まだ大人じゃないっていうんですか!」
「それは大人かどうかには関係ない」
 ビューラにぴしゃりと言われ、リンクは不満そうに唇を引き結ぶ。
 ルージュは何かを考えるそぶりで肘置きにもたれかかった。
「しかし、リンクが我が街を守ったのは事実。そう無下に断るわけにもいくまい。ならば……」
 族長はすっくと立ち上がった。豪奢な装飾品がジャラリと音をたてる。
「今日一日、お前は私に付き合って街の視察をする。そうすれば、夜の宴にとびきりのヴァーイミーツヴォーイを用意させよう!」
「やった! ありがとうございます」
 リンクは飛び上がって喜んだ。焦ったのはビューラだ。
「族長、突然何を……」
 うろたえる側近に、ルージュは涼しげな目を向ける。
「宴の準備の間、わらわやリンクがここにいたら邪魔であろう。ビューラ、お前もついてくる必要はないぞ。何かあったとしても、イーガ団のアジトに乗り込んだ英傑がいるから平気だ」
「はーい。お任せください族長さま!」
 調子よく相槌を打ち、リンクはさっさと歩きはじめたルージュの後を追った。何か言われる前に退散するのが吉だ。族長の間を辞するときも、ビューラはまだ混乱した様子だった。
 屋敷を出る前に、リンクは改めて自分の服装を確認した。
 頭には日よけのヴェールをかぶり、口元も砂塵を吸い込まないために布で隠している。そこまでは、まだ機能性を重視していると言えよう。だがその下は、腹部と肩を大胆に露出したゲルド風の服だ。もちろん、女性用である。
 ゲルドの街は商業が盛んであり、あちこち見て回るのがとても楽しい。だがうろうろするには女装する必要があるのが難点だった。
 慣れたつもりでも、こうやって自分の格好に思いをはせると赤面せずにはいられない。リンクは羞恥心を振り切り、ルージュの背中に呼びかけた。
「ところで族長さん」
「堅苦しいな。ルージュでよい」
「……ルージュさん。街の視察って、何をするんですか」
 屋敷のエントランスである階段の上に立ち、ルージュはぐるりと街を見渡した。外に出る際、あの重たそうな黄金の冠は置いてきたので、いつもより背が低くなったようだとリンクは思う。
「ここは交易の街だ。皆が商売に不安を抱えていないか聞いて回るのも族長のつとめ。それに、今どういった商品やサービスに需要が集まっているのか、確認する必要がある」
「はあ……」
 いまいち重要性を理解できずにリンクが眉根を寄せていると、ルージュはからりと笑った。
「要するに、族長さまのささやかな息抜きだ」
「えっ」
「付き合ってもらうぞ、リンク」
 なるほど、どうやらナボリスの一件以来より厳しくなったビューラの視線から逃れる、唯一の機会ということらしい。リンクは都合のよい護衛兼、憂さ晴らしの相手だ。
 迷いない足取りでルージュが向かったのは、街の入り口近く、高級宝飾店「スター・メモリーズ」だった。
 まぶしい日差しの満ちた屋外から一転して、店内では計算され尽くした照明の下、夜空の星のように宝石たちが輝いている。酒場とはまた違った大人っぽさにあふれており、リンクは萎縮してしまう。
 店長が出てきてルージュを視認し、優雅に一礼した。
「ヴァーサーク、族長。今日は視察ですか」
 どこの店に入ってもこういう対応をされるのだろうか。羽根を伸ばすための視察といえど、結局はどこに行っても族長さま扱いだ。なかなか大変そうだとリンクは思う。
 店長の目がリンクの金髪にとまった。ゲルド女性は長身なので、見下ろされる格好になる。
「あら、あなたは……火打ち石を持ってきてくれた子じゃない」
 ここの店長アイシャと面識があったことを思い出し、彼は黙って頭を下げた。
 ルージュの唇が優美な弧を描く。
「サヴァーク、アイシャ。彼女は私の客人だ。大人のヴァーイになって酒を飲みたいというから、この街を案内して女を磨かせるのよ」
(えっ、いつからそんな話に!?)
 リンクは目を白黒させた。それでも口を開かないのは、男とばれるのを恐れてのことである。
 酒を飲みたいのは事実だが、そのために大人の女を目指すというのは——
(でもヴァーイミーツヴォーイはゲルドの街にしかないし、大人の女にならないと確かに飲めないよなあ……)
 なんだか丸め込まれているような気がするが、ひとまずルージュの方針に従うことにしよう。どんな話も前向きに受けとめるのはリンクの長所である。「自分は百年前の英傑の一人である」という誇大妄想レベルの話すら受け入れた経験があるのだ、女性だけの街で女装をして大人の女を目指すことなど、容易いものだ。
(でもやっぱりこのアプローチは間違ってる気がする)
 真剣に悩み始めたリンクを置いて、ルージュは楽しそうに話を進めている。
「まずは手始めに、ジュエリーを見繕おうと思ってな」
「是非ごゆっくり選んでください。しかし、ウチは原料の宝石を持ってきていただけませんと、アクセサリーをつくれないのですが……」
 ルージュはリンクを振り返り、
「何か持っていないのか」
 彼は肩をすくめて、貴重品を入れるポーチの中から小ぶりなサファイアを取り出した。磨く前の原石だが、前に旅の商人に見せた時はなかなかの上物としていい値段がついた。いつかお金に困った時にでも換金しようと思っていたのだが。
 清浄な青い石を見て、店長は華やかな顔に笑みを浮かべる。
「まあ! ヴァーイの真っ青な瞳とよくお似合いですよ」
「これを……そうだな、耳飾りにしてもらおうか」
 ルージュは実にスマートな仕草で代金を出した。慌てて何か言おうとするリンクを制し、ささやく。
(付き合ってもらっているのだから、私が出すのが当然だ)
 これじゃあ男女の立場が逆じゃないか、と思うリンクであった。
(あ、ありがとうございます……)
 一からデザインを考えましょうかという申し出を断り、すでに出来上がっている台座に宝石をはめ込むだけにした。なので、完成までそれほど時間はかからなかった。ヒンヤリメロンのジュースを飲んで待っていると、やがて一対の耳飾りを持ったアイシャが現れた。
「こちらでございます」
 なめらかな布の上で、青い二粒が冴え冴えとした輝きを放っていた。恐る恐る手に取り、耳につけてみる。鏡で確認したが、このデザインなら普段もつけられそうだ。
「お客様の可愛らしさに、ゲルドらしい華やかな美しさをプラスするデザインとなっております。ちなみにサファイアを使用したので、耐寒の力が備わっています」
「よく似合っているぞ」
 ルージュはニヤニヤしながらうなずいた。「ど、どうも……」小声で恐縮するしかない。
 店を出ると一気に日差しが照りつけた。族長は手で光を遮り、街を見回す。
「さて、次はどこへ行こうか」
「次もあるんですか!?」
「大声を出すと正体がばれるぞ。夜まで時間があると言っただろう」
 顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせるリンク。それがよほど面白かったに違いない、ルージュはうつむいて肩を小刻みに震わせていた。
 大通りから一本裏に入り、二人は再び族長の屋敷の方に向かっていく。
「大人のヴァーイになるためには、外見だけ美しくしても仕方がない」
 ルージュが自信に満ちた調子で語る。
「はあ、そうですか」
「内面を磨いてこそ、運命のヴォーイを射止められるのよ」
 ますます視察の目的が崩壊してきた。「この人、単に僕で遊びたいだけなんじゃ……」とリンクは疑い、苦言を呈した。
「僕、さすがにそういう趣味はないんですけど」
「ヴァーイの内面を知ることは、これから大いに役に立つと思うぞ?」
 ふと、よみがえった記憶の主要人物であるゼルダのことを考えた。思い出した順番と実際の時系列がバラバラだからかもしれないが、いきなり怒ったり不機嫌になったりしていた。確かに女性の心理はリンクにはよく分からない。
 連れて行かれたのは、「恋のABCレッスン」と表に看板の出た一室だ。
「ここは、ゲルド女性の間で大人気の恋愛指導教室だ」
「恋愛……って、こういうところで勉強するものなんですか」
「いいから見学するぞ」
 講師はプシャン。ゲルド女性の間では恋愛のカリスマと呼ばれ、憧れの的になっている人物だ。(それって何度も恋愛して失恋したってことかな?)とリンクは不思議に思う。
 教室に入っていくと、生徒たちの目がルージュとその連れに集中したが、プシャンがパンと手を叩いて講義に注意を引き戻した。部外者二人は後ろの方の席に腰掛ける。
 本日の講義は、素敵な男性と道ばたで出会った時にどうすべきか、というテーマらしい。それについて、生徒たちは目の前でハンカチを落とすのがいいだの、わざと体をぶつけてみるべきだのと、熱く議論をかわしている。どうやら講師が一方的に正解を述べるのではなく、生徒個人の考え方を尊重して助言する形式らしい。
 世の中の女性はここまで計算し尽くして行動しているのだろうか。リンクは暑さとは別種類の熱気にやられ、頭がくらくらしてきた。
 隣にひそひそ声で話しかける。
「ルージュさん、こんな話聞いてて分かりますか……?」
「いつかは必要になることだからな、興味深い」
 ついにリンクは限界を迎え、後半は頭を垂れて船をこいでいた。
 ——肩を揺られて目が覚める。隣のルージュが目で前方を示した。講義を終えたプシャンが、二人に向かってしゃなりしゃなりと歩いてくる。
「どうでしたか、族長」
「面白かった。彼女には、少し早かったようだがな」
 リンクは照れ笑いしながらずれたヴェールを直した。プシャンが優美な仕草であごに手をあてて、
「夜は自宅でお料理教室をやっているの。そちらの方が自分に合う、っていう生徒さんもいらっしゃるわ」
 僕もそっちがよかった……と思わず言いかけた。いつか夜に必ず訪ねよう。
「ルージュ様は、もう少し年齢を重ねられると、屋敷で個人レッスンがはじまりますから。またそのときに」
「ああ、楽しみにしている」
 二人は礼を言って外に出た。日はずいぶんと傾き、街を満たす暑い空気にほんの少しだけ涼風が混じってきた。
 世襲制の族長を継ぐために、あんな訳の分からない講義を受けなければならないなんて。
「族長って大変なんですね……」
 リンクは心の底から同情した。ルージュは軽く首をかしげる。
「大したことではない。ゲルドのヴァーイは、皆経験することよ」
「僕、この半日でもうへとへとなんですけど」
 普段野山を駆け回ったり崖を登っている時とは別の疲労感だ。慣れないことだから、神獣攻略よりよほど疲れた。
 ルージュは意味ありげな目線を送る。
「疲れたのか」
「はい、まあ」
「休もうか」
 もしかして酒場にでも行って早めの休憩かな、そこでお酒が飲めたりして、と少しだけ期待したのだが、
「宿に向かうぞ。ホテル・オアシスの美肌エステプランで、心身を癒やす!」
 リンクの背筋は凍りついた。
「え、エステ……!? もしかしなくても、服を脱ぐやつじゃないですか! まずいですって、さすがにバレますよ」
「お前、そこまで露出していてよくそんなことが言えるな」
 痛いところを突かれ、リンクは思わず腹部を手で隠す。
「お腹もそうだが、肩だ。普通は肩幅でばれるだろう」
「あ」
 趣味が崖登りと言えるほど腕の力には自信があるが、リンクは身についた力がとことん体型に現れないタイプらしく、華奢であった。実は自分は女性的な体型だったのか。リンクはショックを受ける。
「だからエステも余裕で受けられるだろう。肌をつやつやにして、大人のヴァーイになるぞ!」
「うう……何故こんなことに……」
 リンクはルージュに引きずられるようにしてホテルに入って行った。
 それから数刻の時が経った。宿からは時折くぐもった悲鳴のようなものが聞こえたが、やがて静かになった。
 すっかり日が落ちて、街の雰囲気はがらりと変わった。昼間の仕事を終え、夜の辻に繰り出して遊ぶ女たちが、そこここで明るい声を立てている。
 その光景とは対照的に、ホテルの玄関でうなだれる人影があった。
「なんだ、辛気臭い顔をして。疲れが取れただろう」
 ルージュはふふと笑い、ぐったりするリンクの肩を叩く。
「体が元気になった分、精神的な疲労がこたえるんですよ……」
 まったく、上半身の服を脱いでうつ伏せに横たわる羽目になった時は、いつバレるかとヒヤヒヤした。用意された布で必死に前を隠したが、幸いにもエステティシャンは「初めてで緊張しているんだね」と解釈してくれた。むしろ肌に傷跡が無数に浮かんでいるものだから、普段何をしているのかとやんわり追及されたくらいだ。
 ルージュはぐったりしているリンクの口元の布を無造作にめくると、あらわになったほおをつまんだ。
「な、何を……」
「うん、確かに肌がもちもちしている気がするぞ」
 リンクは彼女が指を離すまで好きなようにさせた。
「そういえば、ルージュさんはエステ受けなくても良かったんですか? 族長の仕事、疲れるでしょうに」
「私は年齢的に地肌がすべすべだからな」
「それもそうですね」
 砂漠の夜は寒い。リンクは荷物からこういう時のための羽織を出し、肩をかき抱く。
「リンク。今日一日視察に付き合って、どうだった?」
 ちょっとだけ返事を考えてから、彼は素直に答えた。
「なんだかんだ、面白かったですよ。外見が変わると、気分もちょっと変わりますね。少しだけ、大人のヴァーイになれた気がします」
「ヴォーイじゃなくていいのか?」
「は!? そうだった、危ない危ない」
「ふふ……」
 ルージュは笑った。今日だけで何度も彼女の笑顔を見るという幸運に恵まれたが、今の顔が一番良かったとリンクは確信する。
「今のルージュさんの方が、いつもよりずっといいですね。リラックスしていて楽しそう」
 少女は彼をきょとんとして見上げる。ハイリア人の青い瞳が優しく細められ、その隣で耳飾りのサファイアがきらめく。
「背伸びするのも、ほどほどがいいですよね。今日楽しかったのは、僕もあなたも同じように、子供の目線で街を巡れたからだと思います」
「大人のヴァーイを目指す」という名目のもとに遊んでいても、リンクはずっと「大人とはなんだろう」と疑問を抱いていた。ルージュももしかすると同じだったのではないか。
 そう言うと、ルージュは静かにまばたきする。
「百以上も歳が離れていて、同じ子供の目線になれるというのはどうなんだろうな」
 リンクは百年前に存在した英傑その人なのだ。鋭い指摘に対し、どう見ても十代にしか見えない現在の彼は、苦笑するしかない。
「いやー、百年ずっと寝てたら何にも成長できないし、むしろ精神なんて後退してるくらいですよ」
 ひそやかに笑い合い、会話は打ちきりとなった。そのまま街の中心にある階段を上り、族長の屋敷入り口まで帰ってきて、リンクはふと唇を開く。
「僕、やっぱりヴァーイミーツヴォーイは今度の機会にとっておきます」
 ルージュは驚き、見事に結った赤髪を揺らした。
「何故だ? あれほど飲みたがっていたのに……」
「だってルージュさんは飲まないんでしょ? 僕だけ飲むのは申し訳ないです」
 一旦言葉を切ると、彼は今日の夜空のように晴れ渡った笑顔を見せた。
「それに、運命のヴォーイ? ヴァーイ? だって、まだつかまえてないし。お酒は、ちゃんと大人になったときの楽しみにします」
 ルージュは遠くを見るような目になる。
「そうか。それもいいだろう。……いや、それでよかったんだな。背伸びなんてしなくても」
 最後の言葉は、リンクの耳に届く前に夜の中へと消えた。
 族長とその客人は、煌々と明かりが焚かれた屋敷へ向かって前進する。
 すでに宴は準備万端だった。帰ってきた主君の姿を確認し、ビューラが一安心と胸をなでおろす。族長は手早く着替えを済ませ、リンクも多少は身なりを整え、宴の席についた。
 給仕がルージュに液体の入ったグラスを差し出す。
「族長はこちらを。それで、お客様のお飲み物は——」
「私と同じもので頼む」
 怪訝そうな顔をしたビューラに、リンクはにっと口の端を上げた。
 グラスの底に透明な青がたまっている。東のカラカラバザールでとれたヤシの実を絞り、ゲルド地方では貴重なヒンヤリハーブを色付けと隠し味に使った、特製のジュースだ。舌に爽やかな甘みの残る、子供の味。まだまだ「これから」の二人を象徴する味だ。
 ルージュはグラスを高く掲げた。
「お前の瞳の色に似ているな」
「そうですか?」
「悪くない色だ」
 どうやら褒められたようだった。リンクははにかみ、自らも杯を持つ。夢に描いたような大人の雰囲気はないけれど、これからはじまる宴にはきっと、今しか味わえないものがある。
「乾杯!」

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