流れる者たちの公理



 背負ったリュックを期待でふくらませ、トレサはクリフランドの起伏の多い道を軽やかに駆け抜ける。
 その足が道しるべの看板の前でぱたりと止まった。次いで若葉色の目がにっこり細められる。
「ついに……ついに来たわよ、クオリークレスト!」
 トレサは羽飾りのついた帽子を揺らし、後ろを振り返った。
 突然芝居がかった調子で声を張る彼女に、年上の仲間たちは不思議そうに視線を返す。
「どんな町か教えてあげるわ」トレサの手には使い込まれた手記がある。彼女の旅立ちのきっかけとなったものだ。
「クオリークレストは寂れた鉱山の町なんだけど、ちょっと前に金の鉱脈が見つかったって噂があるの」
 彼女は行商人の修行をしながら「名無しの旅人」の足跡をたどる旅をしている。そして今日、ついに手記に書かれた町にたどりついた。
 ここは海を越えた先、いつも窓辺で夢見ていた「あの水平線の向こう」なのだ。
 わくわくを隠しきれないトレサに対し、テリオンが冷めた顔で指摘する。
「その噂とやらはいつの話なんだ?」
「え? えっと……」
 そういえばこの手記はいつ頃書かれたものなのだろう。個人的な日記であるにもかかわらず、どのページにも日付が入っていなかった。紙の劣化具合からしてそこまで古くないはずだが。あまり詳細を知ってもロマンがなくなると思い、元所有者のレオン船長からも聞きそびれていた。
「トレサ、クオリークレストは少なくとも寂れた町ではないようだぞ」
 ハンイットが手のひらをひさしのようにかざしながら崖上を見る。リンデが同意するようにガウと啼いた。他の仲間たちは何故かそろって苦笑している。
 トレサもつられて首を上向け、大きく目を見開いた。
「え……えーっ!?」
 眼前にそびえる草木のない山には木組みの足場がいくつもとりつき、その上で黒い粒のようなものがたくさんうごめいていた。風に乗ってカンカンという金属音が聞こえてくる。
 もしや、あれ全部が人間か。ということは——
「クオリークレストはこの地方では有数の金の産地だね」
 穏やかなサイラスの声がそのまま答えを告げる。
 手記に書かれた時代から幾星霜。クオリークレストは、大勢の出稼ぎ労働者でにぎわう金鉱の町となっていた。



 町角を行き交う人、人、人。いくつもの靴が乾燥した地面を蹴り上げ、土埃を立てる。背の低いトレサはむせそうになりながら、すっかりお上りさんの気分であたりを見回した。
(全然話が違うじゃない!)
 故郷を出て初めて王都アトラスダムを訪れた時だって、こんな驚きは得られなかった。
 クオリークレストに到着した彼女たちは宿に荷物を置き、夕食まで自由時間を満喫することになった。三々五々散っていく仲間たちを見送ってから、トレサは一人で町に出た。
 町の入り口近くには食べ物の香りが漂う露店街、その奥には広場があって、旅人向けの宿屋や酒場が並んでいる。どこに行っても人が多い。肝心の鉱山は町から木の階段を上った先にあるようだ。トレサは人混みを抜け、さっそく鉱山を目指した。
 手記に記された「金の鉱脈が見つかった」という噂は本物だったようだ。ゴールドラッシュがはじまり、多くの出稼ぎ労働者が流入したおかげで、ここまで町が発展したのだろう。あの労働者を管理するのは大変だろうな、給料はどうしているのだろう、金鉱石の稼ぎはやっぱり大きいのかな……とトレサは商人らしい視点で考察する。
 階段を上りきると視界が開けて、乾いた山と多数の足場が目に入った。ツルハシの音がどんどん近づいてくる。あの茶色の山肌に、金鉱脈が眠っているのだ。
 リュックの肩紐を握りしめて歩くトレサは、幾人もの鉱山労働者とすれ違った。皆薄汚れた服を着ていて、なんだか暗い顔をしている。
(金が取れて絶好調、ってわけじゃないのかな?)
 出来高制なら労働者によって稼ぎも違うだろうし、常に財布の中身が満杯というわけにはいかないのか。
 近くで見ると鉱山の様子がよく分かった。作業場への入り口には柵が張られており、その手前に「クオリークレスト鉱山」と看板の出た小屋があった。休憩スペースだろうか。
 トレサはひとつうなずいて、「お邪魔しまーす」と中に入ってみる。
 休憩所にしては狭かった。壁にかけられたたくさんの札にはそれぞれ数字が書いてある。労働者たちの整理番号だろうか。どうやら、鉱山で働く人々を管理している場所らしい。
 小屋の中では目つきの鋭い男性がカウンターに座り、訪問者らしき老婆と話していた。
(こんな場所になんでおばあさんが?)
 なんだか不釣り合いな組み合わせだった。見たところ六十の坂は越えていそうな老婆だが、背筋はしゃんと伸びている。もしや労働者の家族だろうか。
「すみません。手は尽くしているんですが、なかなか見つからなくて」と男性が頭を下げ、
「そうかい……。本当に、どうして急にいなくなったんだろうね」
 老婆が肩を落とす。
 何やら取り込み中のようだ。トレサが後ろ手にぱたんと扉を閉めると、二人ともこちらを振り返った。向けられる視線が何故か刺々しい。トレサはうろたえながら質問した。
「あのー、鉱山の見学ってやってますか?」
「残念だが部外者は立入禁止だ」
 男性はにべもなく答える。物見遊山目的だと思われているのだろう。トレサとしては大真面目に商売の種を探しているのだが。
 男性の胸には名札がある。「0002」と書かれているのは、壁にもあった労働者を管理するための番号らしい。
 トレサはなおも粘ろうと足を踏ん張る。今度は老婆がじろりとにらんできた。
「あんた、商人だね」
「そうですけど」
 大陸共通の商人の証である羽飾りを見て気づいたのだろう。トレサは誇らしい気分で帽子をさわった。
「おおかた、金の取引きが目当てでやってきたんだろ。無駄だから諦めな」
 トレサは眉間にしわを寄せる。
(無駄って何よ。それに、どうしてここまで敵視されなきゃいけないの?)
「それはどういうことですか」
 トレサが食い下がろうとした時、扉が開いて、新たな労働者が小屋に入ってきた。
「監督! ほら見てくれよ、金がとれたんだ」
 労働者は両手いっぱいに鉱石を抱えていた。黒っぽい石の中にまだらに金色が浮かんでいる。横から覗き込んだトレサは「わあ」と歓声を上げた。金の取引きには関わったことがないが、この輝きは本物に違いない。
「こんなにとれたのは久々だよ。モーロックさんにいい値段で買い取ってもらえるかな」
 労働者は土埃で汚れた顔に笑みを浮かべる。
「……そうだな」
 監督と呼ばれた男性は、どこか気乗りしない表情で相槌を打った。
 トレサは是非くわしい話を聞きたかったが、
「いつまでいるんだい!」
 と老婆に叱られてしまい、ほうほうの体で小屋から出た。
(もう、なんなのよ。確かにあたしは部外者だけど……)
 トレサは未練たらしく鉱山を眺める。小さな商人の思惑など無関係に、労働者たちは採掘を続けていた。
「おい、手を止めろ! モーロックさんだぞ」
 突然誰かが叫んだ。労働者たちがツルハシをおろし、足場の上でかしこまる。トレサは彼らの視線の先を追った。
 恰幅のいい紳士が傭兵と思しき男を引き連れて、のそりのそりと歩いてくる。紳士は仕立ては良いが汚れやすそうな白い服を着ていた。彼がモーロックだろうか。先ほど小屋の中でも聞いた名前だ。ここの鉱山の持ち主かもしれない。
 騒ぎを聞きつけたらしく、管理小屋から先ほどの監督と労働者、それに老婆が出てきた。
「今日の作業も順調です、モーロックさん」
 監督が報告する。どこか冷めた声で。
「ふむ、ご苦労。精が出ているようだな」モーロックは鷹揚にうなずいた。
「見てください、この金塊! 重たくて手がもげそうだぜ」
 反対にこちらの労働者は目を輝かせている。モーロックは満足そうに鼻を鳴らした。
「落ち着きたまえ。ワシがしっかり買い取ろう。適正な値段でな」
 手を止めた労働者たちはモーロックを遠巻きに眺めている。トレサはこっそり移動して、手近な男に話しかけた。
「あの人って誰なんですか?」
 また部外者扱いされてしまうかと思いきや、その労働者は案外あっさり答えてくれた。
「地主のモーロックさんだよ。ここの鉱山一帯の持ち主さ」
 金の利権は地主ががっちりおさえているというわけだ。さすがにトレサが間に入って売買するのは無理そうである。
(でも、なんだろう。他にも商売の匂いがするのよね)
 商人の血が騒ぐような感覚がある。トレサは匂いの出どころを求めてキョロキョロした。
 モーロックはひとしきり鉱山を見て回ると、傭兵とともに町の方へ戻っていった。毎日こうやって見物に来ているのかもしれない。
 気を取り直したトレサは、鉱山のまわりをぐるりと巡ってみることにした。
 道の端に、鉱石を満載した荷車がいくつか置かれていた。地主に買い取ってもらうために石を運ぶ必要があるのだろうが、こんな場所に放置してあるのは何故だろう。見たところ金鉱石はないようだった。
 なんとなく荷車が気になり、よく観察しながら歩く。
「トレサ、こんな場所でどうしたんだ」
 急に横合いから声をかけられた。びっくりして顔を上げる。
「ハンイットさん!」
 仲間の狩人の女性だ。同性でも惚れ惚れするような均整の取れた顔立ちをしている。彼女は相棒の雪豹リンデを連れていた。
「ハンイットさんこそ、鉱山が気になるの?」
「ああ。見たこともない景色だからな」
 ウッドランド出身の彼女からすると、岩だらけのクリフランドは興味深いのだろう。鉱山に向けられた瞳にはわずかな好奇心が覗いている。リンデはもっと分かりやすくそわそわしていた。
 トレサは荷車を指差して、
「あのね、あたしはここで商売の匂いを感じたのよ」
「ほう。具体的にどういう匂いだ?」
 トレサはうーむと考え込む。何度も感じてきた匂いだが、それがどういうものかきちんと言語化したことはなかった。
「お金が儲かりそうとか、高く売れるものがありそうとか……?」
「なるほど、金の匂いがするという比喩表現か」
 ハンイットは得心がいったふうに何度も頭を振る。
「そ、それはそうなんだけど」身も蓋もない言い方だ。「それだと夢がないというか、ロマンに欠けるというか」
「つまり言葉の響きが大事なんだな」
「そう、すっごく大事!」
 トレサはぱんと手を叩く。商売の匂いとは、彼女が旅に求めるものにも通じる「わくわく感」をもたらすものだった。
 ハンイットは乾いた山並みを見渡して、
「分かった、ではわたしも商売の匂いを探すとしよう」
「一緒に来てくれるの?」
「ああ」
「ありがとう!」
 一人で好き勝手に行動するのもいいが、仲間がいれば楽しみも倍増する。二人は並んで歩きはじめた。
 とはいえ鉱山には入れないのだから、遠目に見物することになる。トレサは道の脇の荷車にちらちら目線を投げた。
「鉱山というのは儲かるのか?」
「そうね。さっき見た金鉱石はかなり質が良かったわ。何百人いるか知らないけど、これだけの労働者が食べていけるんだから、相当な鉱脈よ」
「トレサは物事をよく知っているな。旅をはじめるまでリプルタイドから出たことがなかったというのは本当なのか?」
「リプルタイドには中つ海を越えていろんな品物が運ばれてくるの。港にいれば大陸中の商品を見られるんだから」
「そうか。シ・ワルキとは商売の規模が違うのだろうな」
 ハンイットは狩人として近場を回ることが中心で、ほとんど森から出たことがなかったらしい。だからこういった都会には少し不慣れな様子だった。そこが意外で可愛い部分だと思う。
 故郷は今や内海のはるか彼方だ。現在トレサがいる場所は、リプルタイドの港で見ていた品物の出荷元である。その事実は胸にじんわり感動をもたらす。
 話を一旦区切ったトレサは、荷車を引く一人の労働者に目を留めた。荷台の上には黒く濁った石が山と積まれている。
「おじさん、この石は?」
「ただのクズ石だよ。何の価値もない石さ」
 労働者は疲れ切った様子で答えた。やはり、誰もが金鉱石を手に入れられるわけではないらしい。彼はそのまま荷車を置き、近くに座り込んで休憩をはじめた。
 トレサは石をじっと見つめる。ハンイットも同じく注視した。
 その時、脇からひゅっと別の手が伸びてきた。
「確かに金鉱石はなさそうだな」
「テリオンさん!」
 いつの間にそこにいたのだろう。トレサは一切気配に気づけなかった。まさに神出鬼没と言いたくなる登場だ。
 彼は白銀の前髪の下から、手に取った石を鋭く観察している。
「鉱石に興味あるの?」
 トレサが質問すると、テリオンは口の端を吊り上げた。
「別に。金鉱石なら俺が盗むとでも思ったのか」
「なっ——」一瞬絶句する。「そんなわけないじゃない!」
 思わず大声になってしまった。
「テリオン、そういう言い方は良くない」
 ハンイットにも叱られ、テリオンは表情を消す。そのまま何も言わず荷車に石を戻し、さっさときびすを返した。
 あっという間に去っていった紫の外套を見送り、トレサは小さく息を吐く。
「もう、何だったんだろあの人」
「さあな……」
 ハンイットも態度を決めかねているようだった。
 トレサはクズ石の山から、テリオンが手にとった石を選んで拾い上げる。
「あれ、この石……」
 何かがひっかかる。それはまさに「商売の匂い」としか言いようのないものだ。
 トレサは荷車の持ち主に話しかけた。
「おじさん、この石全部あたしが買い取るわ!」
「ほ、本当に?」労働者は仰天した様子で腰を浮かせた。期待に満ちた表情は、一瞬ののちに不審が入り混じる。
「もちろんよ。このくらいでいい?」
 トレサはすかさず五百リーフを握らせてやった。現金を手にして、労働者はやっと安心したらしい。
「ありがとう、助かったよ。しかしこんなクズ石を買うだなんて……お嬢ちゃん、正気かい?」
「まあね。いい買い物ができました!」
 労働者はコインを握りしめて酒場の方に向かっていった。
 ハンイットは思案顔で荷車を眺める。
「トレサには何か考えがあるのだろう?」
「うん。なんというか、この石には光るものを感じるのよ」
 言葉のまま、磨いて光らせてみようと考えた。
 リュックの中から研磨剤と適当なボロ布を取り出す。ハンイットが面白そうに眺める前で、トレサは一心に石を磨きはじめた。
 しばらく手元に集中していると、黒っぽい表面が剥げてきた。中から鮮やかな緑色が覗く。より必死に磨き上げれば、やがて見違えるように透き通った石が現れた。
「わあ……やっぱり!」
 光に透かすと緑の中に星が瞬く。なんて綺麗なんだろう。隣のハンイットも感心しきりのようで、
「すごいな、クズ石の中に宝石が隠れていたのか。どうしてこうなると分かったんだ?」
「ふふん、これが商売の匂いってやつよ」
 偉そうに言ったが、ほとんどまぐれ当たりである。トレサは石を最初に手にとった人物を思い起こした。
「テリオンさんは、この石のことが分かっていたのかな」
 見たところ、あの荷車に積まれているのは本物のクズ石がほとんどだった。その中からテリオンは的確に「磨けば光る」宝石を選んで手にとっていたのだ。
「どうだろうな。しかし、こうして磨いたのはトレサだろう?」
「そうだけど……」
 テリオンの目利きの技術は本職のトレサも舌を巻くレベルだった。初めて会った時から不思議だったが、一体どうやって身につけたものなのだろう。
 ハンイットは石の山に手を置いて尋ねる。
「さあトレサ、この石をどうする?」
 トレサの両目は手にした宝石のようにきらりと輝いた。
「もちろん売りさばくのよ!」
 ハンイットは目を細めた。
「ふふ、商人らしいやり方だな。だが、これはなんという石なんだ?」
「あっ確かに。名前くらい分からないと売れないわね……。サイラス先生に聞いてみようかな」
 一番博識な仲間を思い浮かべる。
「サイラスなら、この町に住んでいる知り合いに会いに行くと言っていたが」
「そうなの?」
 クオリークレストに知り合いがいるだなんて聞いたこともなかった。では、石のことを教えてもらうのはしばらく後になるか。
 とはいえ名も知らぬ石を売る気はないし、適当に名付けるのも問題があるだろう。トレサはしばし悩んだ。
 そんな時。
「へえ、おたくなかなかやるね」
 出し抜けに声がかけられた。
 近づいてきたのは、赤いバンダナに羽飾りをつけた少年だった。トレサと同じように大きなリュックを背負っており、ひと目で商人だと分かる。
「あ、その石!」
 少年の手にも同じ緑の石があった。「あなたも買い付けたの?」
「へへ、そういうこと」
 少年は自慢げに胸を張った。
 この人、なかなかやるわね。思わぬライバルの登場に、トレサはちょっぴり身構えた。
「俺は旅の商人アリーってんだ」
「トレサよ。あたしも行商の旅をしてるの」
「狩人のハンイットだ。こっちはリンデという」
 一通り自己紹介を済ませてから、トレサは緑の石を天にかざす。
「これ、ぱっと見はただの石だけど、光るものがあったのよね。あたしの目に狂いはなかったわ」
「その石はな、碧閃石って言うんだよ」
「へえ。そんな名前なんだ」
 緑の輝きを持つ石にふさわしい名だ。トレサは石を大切に手のひらに包む。
「なんだ。おたく、この石のこと知らないのか?」
 アリーは呆れたように肩をすくめ、親切にも「限られた鉱山でしか採れない」「見た目はただのクズ石でも、研磨し続けることで一級品の宝石に化ける」と教えてくれた。トレサは感心しながら話を聞く。
「なんにも知らないで買い付けたんだな。とんだ『もやし』もいたもんだ」
「な、何よ、もやしって」
 いきなりの発言にトレサはむっとした。
「まあせいぜいがんばりな。じゃあな」
 アリーはそう言い残して立ち去った。
「か、感じ悪いやつ……」
 トレサはほおをふくらませる。もやしだなんて、とんでもないたとえだ。そんなに貧相だろうかと思わず体を見下ろしてしまった。たくさん食べても一向に太らないことが自慢だったのに。
 アリーを見送ったハンイットは首をかしげる。
「だが親切なやつだったな。どうしてわたしたちに石の名前を教えてくれたのだろう?」
 そういえばそうだ。トレサとアリーはこれから同じ品物を扱おうとする商人だった。黙っていれば、それだけアリーが有利になる。
 考えても答えは出そうにない。トレサはきっぱりと切り替えた。
「ま、いいわ。善は急げよ、この碧閃石を売りさばくわ!」
 ならば見物させてもらおう、とハンイットがうなずく。リンデも唱和した。
 二人は荷車とともに町の広場を目指した。

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