第六章 二度とない刻のために



 二日目の昼前。
 腕を九十度に曲げ、お手本のようなフォームで町を駆ける赤い帽子の男を、ルミナはじいっと物陰から見張っていた。
 郵便配達員のポストマンは今日も予定ぴったりに赤い傘をかぶったポストをまわり、手紙を集荷する。やがて、ルミナが凝視しているポストに近づいていった。
「よし、気づいた!」
 それはルミナがアンジュの手紙を投函したポストだった。
 あれだけ渋っていたアンジュだが、約束通り返事を書き、深夜になってルミナに手紙を託した。そのメッセージにはきっちり封蝋がされてあり、さすがのルミナも中身を見る気にはなれなかった。
「ガッピー! ゴクロウサマデス。手紙ガ一通入ッテイマス」
 どういう仕組みかは不明だが、クロックタウンのポストは喋るのだ。ポストマンはアンジュの手紙を取り出す。心なしか嬉しそうに顔をほころばせ、いそいそと配達かばんにしまいこんだ。
『これで昼には配達されるってわけ?』
「うん、そのはずだよ」
『それまで暇じゃないの。どうするのよ』
 チャットに指摘され、ルミナはぐるりと東地区を見回す。ジャグリングの練習をしているアカとアオ、ぽてぽて歩くボンバーズ団員以外に人影はなく、閑散としている。
「町長公邸に……アロマ夫人のところに行ってみようかな。カーフェイが失踪した時の情報があれば、ヒントになるかも」
 父親の方は今日も会議に引っ張りだこのはずだ。母親なら何か知っていることがあるかもしれない。
 勇んで階段を上るルミナは、途中でゴーマン座長とばったり出くわした。
「あれっ座長? どうしたのこんなところで」
「アロマ夫人に呼び出されたんだよ」
 一日目の朝はそうやって町長公邸に赴き、カーニバル公演の中止を告げられたはずだ。では、二日目には……? 
「ねえ、わたしもアロマ夫人に話があるんだ。ついていっていい?」
「ん……まあいいだろ」
 座長は鷹揚にうなずいた。これまでの三日間と違って、ずいぶん顔つきがスッキリしている。きっとミカウの演奏を聞いたからだ。ルミナは嬉しくなって、ふところにある座長のお面をこっそり触った。
 町長公邸に入って受付を通り、廊下を右に曲がると町長夫人の部屋だ。カーニバルの興行を担当し、クロックタウンの裏の支配者とも噂される実力者である。そもそも町長が小心者で、いつも嫁の顔色を伺っているような男なのだ。彼女がしっかりするのは自然の摂理だった。
 部屋の中には、椅子に腰掛けたアロマ夫人に加えて、何故かダル・ブルーのマネージャーがいた。
(あれ? トトさんだ……なんでいるんだろう)
 アロマ夫人はゴーマンの挨拶も聞かずに騒ぎはじめる。
「あらヤダ。ゴーマン、ちょっと大変よ!」
「と、申しますと……?」
「あなたの所にお願いしたステージの前座だけど、キャンセルになったって話は昨日したわよね」
 ルミナは反射的に背筋を伸ばして座長を見やる。やはり今回もその話があったようだ。
 ここでトトが前に出た。
「ワタクシから説明しましょう。いや失礼……ワタクシはゾーラバンドダル・ブルーのマネージャーのトトです。
 実はグレートベイの海岸で異変が起こりまして……ワタクシどもダル・ブルーの歌姫ルルが、異変のため声を失ってしまったのです。それでカーニバル公演をキャンセルさせていただいたのですが、今朝になって、なんと――ルルが声を取り戻したという手紙が届いたのです!」
 続けてアロマ夫人はあっけらかんと宣言した。
「というわけで、昨日の今日で申し訳ないんだけど、やっぱりカーニバルの興行はやることになったから。準備よろしくねゴーマン」
 ルミナと座長は顔を見合わせる。
「えええー!?」
 町長公邸全体に響き渡るような大きな声を上げたのは、ルミナだった。部外者にもかかわらず一番リアクションが大きかったため、まわりの三人が不審そうに見つめてくる。
「あ、いや、公演が中止にならないのはいいこと……ですよね! やったあ」
 突然のことで、どう喜べばいいのかわからない。とにかく「一回目」の三日間であれほど切望した願いが、今ここに結実しようとしているのだ。
 ふつふつと沸き立つ歓喜を噛み締めていると、アロマ夫人はひらひら手を振った。
「以上よゴーマン。また当日に会いましょうね。わたくし別件で忙しいの」
 このままでは座長もろとも閉め出されてしまう。ルミナは焦ってアロマ夫人に詰め寄る。
「待ってください、まだ用事があるんです!」
 ぽかんとしていたゴーマン座長がその声によって我に返り、彼女を押し留める。
「こいつはうちの座員のルミナですが、どうもアロマ夫人とお話したいことがあるようで……じゃあワシは行くからな、失礼のないようにするんだぞ」
 ゴーマン座長とトトが退出する。
 忙しいというから叩き出されるかと思いきや、アロマ夫人はどっしり椅子に腰を落ち着けて話を聞く体勢だ。夫人の目がきらりと光る。
「あなた、お願いしていた人探しのプロの方かしら?」
 へ? と間抜けな声が出る。チャットが軽く頭をはたいた。どうやら話を合わせろと言いたいらしい。
「そうね、そうね、そうよね。だってあなた、プロの顔しているもの」
 アロマ夫人は一人で合点している。彼女が人探しのプロを頼む理由なんて一つしかない。息子のカーフェイを見つけるため、外部の人間を雇っていたのだ。
「あらやだ、忘れていたわ! 探す人の特徴よね。そうそう、分かっているわ。
 捜索を依頼したいのはわたくしの息子のカーフェイよ。資料を送ったからあなたもよく知ってるでしょ?」
「ええ、まあ。もちろん」
 アロマ夫人はルミナに見覚えがないらしい。子どもの頃にカーフェイと一緒にイタズラをして叱られた覚えがあるが、あれからずいぶん時間が経った。とっくの昔に忘れているだろう。
「カーフェイったらひと月前に姿が見えなくなったのよ。もう大変なの! わたくし、心配で心配で……食べ物がノドにつかえて体重が二キロも減りましてよ」
「はあ……」思わず夫人のふくよかな体をじろじろ見てしまう。
「そんなことは聞いてない? あら、ごめんあそばせ……。で、どうなの? 探してくださる?」
「ええ、任せてください!」
 チャットの指示通り話を合わせることにしたルミナは堂々と胸を張った。
「あら、そうよねプロだもの。じゃあお願いね!」
「それで、何かカーフェイさんに関する情報はないんですか?」
 母親といえど、アロマ夫人はアンジュが手紙を受け取ったことは知らないはずだ。その件について教えるかどうかはひとまず保留し、情報を引き出す方を優先する。
 夫人は頭を振った。
「それがさっぱりなのよ……ああでもね、聞き込み用にこれをつくったの。使ってくださる?」
 立ち上がり、私室と思しきドアの向こうから持ってきたのは、カーフェイの顔と前髪をそのまま模したお面だった。幼い顔立ちなので子どもの頃の姿を元にしているようだ。最近の写し絵が残っていなかったのかもしれない。
 思わぬところでお面が手に入り、にやける顔を隠してルミナは宣言する。
「息子さんは絶対わたしが見つけますから!」
「ええ、頼むわ」
 ルミナは町長公邸を辞した。チャットは上機嫌だった。
『やったじゃない、まさかここでお面が手に入るとはね』
「うんっ」
 結局、本来の人探しのプロとやらは仕事をすっぽかしてしまったのだろうか。おかげでお面が入手できたから文句を言うつもりはないが。
 アロマ夫人はあっけらかんとしているようで、やはり失踪した息子を心配している。ここまで来ると、多方面に迷惑をかけるカーフェイが憎たらしくなってきた。
『ていうかポストマンの集荷の時間はいいの?』
 のんびり町を歩いていたルミナは、ぎょっとして時計塔を見上げる。
「ま、まだ大丈夫。そっちを見張るのはお昼ご飯食べてからにしよっと」
『ナベかま亭の? あんまりおいしくないって噂の料理ね』
「アンジュの料理は独特だから……わたしもごはんつくれないから、他人のことは言えないんだけど。
 もしかして、カーフェイってアンジュのごはんが嫌になって失踪したのかな」
 有り得る話だとルミナは真剣に考察する。チャットは呆れ返った。
『アンタねえ……』
 ぱっと表情を変え、ルミナはいたずらっぽく笑った。
「さすがに冗談だってー。さ、帰ろう!」
 今回になって、一歩一歩着実にカーフェイに近づいていると感じる。アンジュに嬉しい報告をできる日が楽しみだった。



 昼過ぎ、働き者のポストマンは定刻どおりに西地区のポストハウスから出発した。今度は午前中に集めた手紙を配達しに行くのだ。
「よおし、追いかけるぞ」
『バレないようにね』
 ルミナは身をかがめ、いちいち物陰に隠れながら後を追った。ボンバーズ団員が不審そうに見つめてくるので、「しーっ」と唇に手を当ててやり過ごす。
 ゆるやかな階段を下りていき、南広場を横切った。尾行されてるとは夢にも思わないポストマンが小さな路地に入ってくのを見て、ルミナはぴんときた。
(この方向、洗濯場だ)
 南広場から角を曲がると一気に道幅が狭くなる。その先には町の外から流れてくる水路があって、誰が置いたか分からないベンチなどがあり、ちょっとした憩いのスペースになっていた。一座の仲間であるグル・グルさんからブレー面をもらったのもここだった。
 本当にこんな場所にカーフェイがいるのだろうか? 
『あーあ、こんな時ゼロがいたら楽だったんだけどね』
 ポストマンを追いかけている最中、チャットがぽつりとつぶやく。
「なんで?」
『えーっと、アイツはポストハットを持ってるから。ポストマンのふりができるのよ』
 その説明に、ルミナは「なにそれずるい」と控えめに声を上げる。
「なんかさーリンクもゼロもすごい人だよね。わたしだけ普通すぎない?」
『でも、アンタだって時間が巻き戻っても記憶を保っていられるじゃない。何か理由があるんじゃないの』
「うーん……それが分かんないから最初混乱してたんだよ。なんでだろうね」
 首をかしげている間に、ポストマンが水路にかかる橋のそばにあった小さな呼び鈴を鳴らした。
 橋を渡った向こう側にはすぐ家が建っていた。その壁にはひっそりと扉がついていて、中から黄色いキツネのお面をかぶった子どもが出てくる。お面のおかげで顔は全く分からないが、後ろ髪は深い紫色であった。
『誰かしら』
 不思議がるチャットを尻目に、ルミナはその子どもに釘付けになっていた。
(……カーフェイだ。小さい頃の!)
 昔々、ルミナが刻のカーニバルにやってきた時、カーフェイはあのお面をかぶってアンジュたちと遊び回っていた。確かキータンのお面という名前だったはずだ。
 ポストマンから手紙を受け取った子どもは、さっと身を翻した。
「待って!」
 突然の声に驚くポストマンを押しのけて子どもを追いかけた。子どもは明らかにぎょっとして、出てきた扉に戻ろうとする。すんでのところで間に合い、ルミナは表側のドアノブを掴んで必死に引っ張った。
「……入れてくれないと、ここにカーフェイがいるって騒ぐよ。わたし、大声には自信があるから、広場まで聞こえちゃうかもよ」
 静かな脅しが効いたのだろう、子どもは力を緩めた。その隙にするりと中に入り、扉を閉める。
 入って正面に壁があり、右手がスロープになっていた。そこを上り切るとこぢんまりとした部屋にたどり着く。机とベッド、その他は何に使うかも判然としないものが雑然と置かれていた。大人が三人も入れば満杯になるような狭さだ。
 上で待っていた子どもは、ベッドに腰掛けてお面を外した。
「久しぶりだな、ルミナ」
 意志の強そうな瞳は、確かにルミナがよく知る友人のものである。その胸元には青い玉石をはめ込んだペンダントが揺れていた。
「カーフェイ!」
 こうして見ると子どもながら整った顔立ちだ。偶然だが、カーフェイの過去の姿を模したあのお面とそっくりだった。
『え、嘘。アンタどう見ても子どもじゃない! アンジュさんの婚約者って……ええ?』
 チャットの混乱も無理はない。ルミナはそっとカーフェイの隣に腰を下ろした。
「さんざんアンジュを心配させて、クリミアにも迷惑をかけて、こんな姿にまでなっちゃって。今まで一体何してたの?」
 厳しい追及を受け、カーフェイは苦々しい顔になった。そういう複雑な表情は、本物の子どもが浮かべるものとは違う。
「この姿は、お面をかぶった変な小鬼にやられたのさ」
 チャットがぴょこんと跳ねる。犯人に心当たりがあるのかもしれない。
「でも、隠れてるのはそのせいじゃない。ボクはこの姿にされた時、北門のほこらに住む大妖精に相談しに行った……。その途中、ヒョコヒョコ歩く笑い顔の男に、大切なお面――婚礼の面を盗まれたんだ!」
 ルミナは思わず「うわあ」と声を上げそうになった。踏んだり蹴ったりだ。
『アンタ……ドジねえ。私の相棒みたい』
 チャットが嘆息する。相棒とはリンクのことだろう。ルミナが知る限りの彼はそういうドジを踏まないタイプのはずだが。チャットの方が付き合いが長い分、いろいろな場面を見ているのだろう。
「結婚式を前にして浮かれてたんだ。そのスキを狙われた。あいつはこのあたりを荒らしてる、サコンっていうスリだったらしい」
『あら、そう。お気の毒さま』
 チャットは存外カーフェイに厳しかった。
「アンジュが心配しているのは分かってる……。でも、今はまだ出ていけない。彼女に約束したんだ。婚礼の面を持って絶対迎えに行くって」
 その時ルミナはひらめいた。
「今になってアンジュに手紙を出したのは、町から避難しないでほしかったから?」
「ああ。それもある」
『あのねえ、今「月が落ちてくる」って町が大騒ぎになってるの、分かってんの?』
 カーフェイはゆっくりとうなずく。
「もし最期の瞬間があるとしたら、その時一緒にいたい人は決まっているんだ」
 それなら恥もプライドもかなぐり捨てて、太陽のお面抜きでアンジュに顔を見せてあげればいいのに。
 などとルミナは考えてしまうのだが、どうもそういうわけにはいかないらしい。それは、今までの「三日間」における彼の行動から明らかだ。
 このカーフェイの心理をルミナはいまいち理解できない。彼はアンジュとクリミアのあのやりとりを知らないから、こうして自分の問題にだけ集中していられるのだ。腹の底からふつふつと怒りが湧いてくる。
(ダメだ、抑えなきゃ。わたしはそもそも部外者だし、みんなは時の繰り返しのことなんて知らないんだから。太陽のお面を見つけてカーフェイとアンジュを会わせて、ついでにめおとのお面をもらう。これだけできれば十分だよね)
 呼吸を深くしてなんとか心を落ち着けた。彼女の心境を知ってか知らずか、カーフェイは首からさげていたペンダントを外した。
 大人の彼がいつも身につけていたものだ。だからこそ、ルミナはお面の子どもを見た時にカーフェイだと確信できたのだ。
「このペンダント、アンジュに渡してくれ。それできっと分かるはずだ」
 ルミナが本物のカーフェイに会ったという、何よりの証拠になる。
「うん。絶対届けるよ」
「頼んだ。今話したこと、みんなにはナイショだよ」
 カーフェイはそこだけ子どものような口調で付け加えた。
『にしても、太陽のお面を取り返すあてなんてあるの?』
 チャットが問うと、彼は部屋の壁に視線を向けた。大きな時計と、なんだか不気味な笑顔を浮かべる大きなお面がかかっている。人間の顔のサイズを遥かに超えており、これはさすがにゼロの探しているお面ではないだろう、とルミナは考える。
「ああ。この町で盗まれたモノはたいていマニ屋に流れる。ボクはそれを待ってるんだ。
 その台に乗って穴を覗いてみな。ここからマニ屋の客がチェックできるんだ」
 お面の両目が、そのまま壁の向こうをのぞける穴になっているのだった。
「へえー」興味本位で覗き込むと、薄暗くて狭い視界だが、しっかりと店内が確認できた。
 なるほど、ここは西地区にあるマニ屋の裏部屋にあたるらしい。そんな場所に一ヶ月も滞在しているのだから、カーフェイはおそらく店主と知り合いだったのだろう。
「そういえば昨日、ヘンな二人組が来てたな。金と銀の髪で、年の離れた男二人だった。そいつらもサコンを追ってるみたいだったけど」
 ルミナはチャットと顔を見合わせる。
『まさか、それって――』
「リンクとゼロだよね? マニ屋にいたんだ。なんでだろう」
 チャットは意地悪な声を出す。
『もしかして、アイツらも何か盗まれてたりして』
「えーまさかあ」
 二人はくすくす笑い合った。カーフェイは怪訝そうに、
「ルミナの知り合いなのか?」
「うん。二人ともかなりの実力者だよ! 戦うところは見たことないけどね。もしサコンを追いかけて会うことがあれば、協力してもらうといいよ」
「分かった。覚えておく」
 彼は神妙な顔になった。ひとりきりで泥棒を追いかけるのは心細かったのかもしれない。
「それじゃ、わたしアンジュにペンダントを渡してくる。カーフェイも無理しないでね」
「ああ。……悪いな、迷惑かけちゃって」
 こういう場面で心からすまなそうにするのが、カーフェイのずるいところだ。だから町で評判の美人を二人も落とせるのだろう。
「ううん。わたしも二人の結婚式、楽しみにしてるから!」
 ルミナは軽い足取りでナベかま亭に向かった。外に出るといつもどおり二日目のぐずついた天気で、カーフェイと会話したことが嘘のように思える。
 でも、心は晴れ渡っていた。目的に向けての大きな前進だった。まだ太陽のお面を取り返す必要があるが、その泥棒とやらが町にやって来ないかぎり話は進展しないだろう。
 チャットは少し小声になる。
『あのさあ、大妖精様の楽器探しは放っておいていいの?』
 脳天気なルミナの胸にぐさりと刺さる指摘だった。
「うっ。わたしも考えてはいるんだけど……デクラッパより大きな音で遠くまで響く楽器って、なんだろうね」
 町の泉を訪れた時、ルミナはため息の出るような美人の大妖精から頼まれ事をした。大妖精の声はなんだか聞き覚えのあるような気がしたが、きっと気のせいだろう。
 楽器といえば、リンクのオカリナではダメなのだろうか。あのオカリナで吹く時の歌は、どんなに遠くにいてもよく響いた。それ以外の楽器となると、よほど楽器自体が大きなものか、オカリナのように特別な力を持ったものか。正直八方塞がりなのだが、大妖精直々のお願いなので放り出すわけにもいかない。
「大丈夫大丈夫、三日目までには見つけるよ!」
 ルミナは言い放った。それは完全に根拠のない自信というわけでもない。
 自分の足の届く範囲だけでも、できることはいくらでもある。カーフェイを探し出したルミナは、もうそれを知っているのだ。

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